「アブラゼミが油っこくなければいいのに」

 

こう考えた

バンダイ・虫が苦手な開発者M氏は

ガシャポンセミフィギュアの企画として

本来の商品名である

「脱皮 ~蝉 夏の思い出~」ではなく

ノンフライアブラゼミ

という驚きのキャッチコピーを付けました。

 


「アブラゼミは油っぽいから怖い」 

という発想もさることながら

アブラゼミをノンフライにすれば油っぽさが解消する、

という独自の解決法まで提示しました。

 これはむし好きが到底思いつかない発想であり

むしぎらい文化研究を推進すべき理由

といえます。

 

 

 

 

 

同梱のブックレットは更に秀逸な虫嫌いフレーズが続きます。

 

「蝉が苦手な開発者Mが作った」ノンフライーアブラゼミ

「急に飛ばない!」「油っぽくない!」→これなら平気!

※決してイタズラに使わないで下さい!

 

挿絵も虫捕り少年が暑くて汗をかいているのか、

苦手なセミを克服すべく奮闘しているのか、

どちらにもとれるダブルミーニング。

 

バンダイのロゴから飛んでいる虫は

「触角が立派なためおそらくセミでない」という点にも

セミ嫌い開発者M氏の、

「セミの絵を描くのもカンベン」という徹底したセミ嫌いの現れといえるでしょう。

 

さて、せっかくですので、

アブラゼミは本当に油っぽいのか

調べてみましょう。 

内山昭一著「昆虫食入門」によると

アブラゼミ(幼虫)の脂質含有量は乾燥重量当たり17%。

鶏卵(43%)よりも低脂肪。

同じ昆虫でもカミキリムシ幼虫(44%)やカイコ蛹(30%)よりも低く、皮なしの鶏もも肉(16%)と同じくらいです。

 

なんと

アブラゼミは油っこくないのです。

すると商品開発M氏のセミ恐怖症は

残念ながら「思い違い」ということになります。

 

油っぽく見えるのは

表面の「クチクラ」という

キチン質の外骨格が緻密な構造をもっており、
水や汚れがつかないようなめらかになっているためと

思われます。

また、体表面にはクチクラを保護するワックスが塗られており、それを丹念にうすーく塗りつけることで、

より清潔に保つことができます。

そのなめらかな面を液体の油になぞらえて

「アブラっぽい」と表現したのでしょう。

 

この「油っぽくなさ」は成分分析だけでなく、

直接触って手に油がつかないことでも確認できます。

ところが

残念なことに開発者M氏は

この誤解を解くことができませんでした。

 

なぜなら

「急に飛ぶ」という生きたセミ最大の特徴を

怖がってしまっているのです。

これではホンモノの生きたアブラゼミが

油っぽいかどうか確認するすべもありません。

もうノンフライアブラゼミのフィギュアを作ることしか

M氏はセミを触ること方法は残されていなかったのです。

 

ということで、

ノンフライアブラゼミ

1,セミの表面が液状の油に濡れているようにみえる

2,急に飛ぶので触れない・怖い

3,フィギュアなら触れる!

4,怖くないセミフィギュアとは「油っぽくないアブラゼミ」である

5,ノンフライアブラゼミ!

という虫嫌いM氏ならではの開発プロセスの結果

必然的に生まれたものと考えられます。

 

実に味わい深いむしぎらい文化だといえるでしょう。

(むしくろとわ)