LEDシーリングライト「虫嫌い設計」
2011年のちょっと古い製品ですが、「虫ぎらい設計」
と銘打った技術です。(ショウジョウバエが出演します)
ヒトが火を使い始めてから
明かりに虫が寄ってくるのは当然でした。
飛んで火に入る夏の虫の他にも類語が多くあり、
蛾の火に赴くが如し/愚人は夏の虫/手を出して火傷する/飛蛾の火に入るが如し/我と火に入る夏の虫
とまぁ
「虫はバカだ」と蔑むばかり。
虫の走光性と灯火に寄ってくる現象は
「平行光と放射光」で一般的に説明されます。
通常、月や太陽の光線は「無限遠」からの光と見ることができるので、まっすぐ動く場合、常に一定方向から同じ角度の光が見えています。これを「平行光」といいます。
ところが、人工的な灯火は近い位置にあるので、
動くとすぐに見える角度が変わってしまいます。
これを「放射光」といいます。
例を挙げてみましょう
右側45度の方向に光源があったとします。
これが太陽や月であれば、10mや1kmまっすぐ進んでも
同じ方向から見えています。
ところが
右側45度、距離10mのところに灯火があった時では、
そのままたった7m進んだ時点で、
真横、右側90度の位置に光源がズレてしまいます。
虫はそのような光に対する対応ができないので、
「7m進んだ際に左45度の方向転換をしてしまった」と
間違った判断をします。
そのため、右に大きく舵を切り、光源に近づくのです。
灯火への昆虫の飛来は、
多くの虫嫌いを生み出すとともに
多くの昆虫の命を奪って来ました。
昆虫の走光性は光の波長によって異なり、
紫外線と可視光の境、350nmあたりが
最も強いと言われています。
LEDは放出する光の波長を限定できる特長があるため、
このような「虫にやさしい設計」が可能になったのです。
このLED技術は、人類史上多くの虫の命を奪ってきた
「走光性」に対応した「虫にやさしい設計」なのです。
更に、LEDの発熱が少ない性質も生かして
密閉型にすることで、侵入をシャットアウトすることが可能になりました。虫にやさしいことこの上ないですね。
ところが、
注目すべきはその売り文句
…「虫嫌い設計」…
目の付け所がSHARPである大手家電メーカーが
あろうことか「虫にやさしい」よりも
「虫嫌い対応」
をうたう方が売れると判断したのです。
そこから考えるに
一般の人は「むしにやさしい」商品に対して
購買力はなさそうです。
逆に言うと、2011年時点で
SHARPは 「ライトに来る虫が嫌いな人は多い」
ということを見ぬいており、LED導入の動機になりうると
判断したのでしょう。
確かに灯火に狂ったようにまとわりつく虫は
鬼気迫るものがあります。
それは彼らがバカで愚かなのではなくて
彼らが進化する間がないほどに
我々が環境を変化させてしまった、といえるでしょう。
ともあれ、
虫好きにも虫嫌いにも好ましい
このLED技術は、
対虫「ユニバーサルデザイン」といえるかもしれません。
応援したいですね。
と
この記事を〆ようとしたのですが、
驚愕の事実です。
は「桜色ライトで集中力アップ!」がメインです。
また、むしぎらい設計のページは生きているのですが
なんとトップページにリンクが無くなっているのです!
つまり
「虫にやさしい」よりは
「虫ぎらい対応」の方が売れると判断されるが
その後2年かけても
虫嫌い対応がLEDライトの購入動機に
ならなかったことを示しています。
シャープは蛍光灯のシーリングライトを
販売していないので、心置きなく
LEDの優位性をアピールできるはずなのですが、
その差額数千円
(2011年当時はもうちょっと高価でしたが)
を「むしぎらい」への投資に向けることはなかったのでしょう。
そう考えると
蛍光灯に来る小さい虫に比べ、
一般家庭における「G向け家庭用殺虫剤」の
投資は相当突出しています。
この話はまた別の機会に。