マルカメムシの味

小学4年生ごろの話です。

私の実家は愛媛の山奥で、

学校はそこから更に4kmほど登った所にありました。
小学生の足では、一時間近くかかる距離だった記憶があります。


その日は「自転車安全講習」で、いつもは徒歩通学の生徒も特別に自分の自転車を持ってきて、消防署の方に安全な自転車の乗り方の指導を受けることになっていました。

登下校の間は、自転車に乗ることが許されず、

当日は自転車を押して持ってこい、
と先生から強く言われていました。

 

講習が終わり、帰り道。

下り坂の誘惑に負けた私は 「またがっても漕がなければOK」 という自分勝手な妥協点を見つけ、
自転車にまたがり下り坂を一気に駆け下りました。

 

勢いがついたまま橋にさしかかった その時です

ポロッと口に何かが入りました。
大きさは小豆ぐらい。
軽い口当たりでクシュっと潰れたようです。

 

マルカメムシでした。

圧倒的なカメムシ臭が口内に広がり 半泣きになりながら自転車を止め 水筒のお茶で口を濯ぎながら橋の下に吐き捨てたのでした。

あれから10年 
大学に入り、そんな経験も忘れた頃
とあるベトナム料理店で麺を頼みました。

上にはセリのような葉っぱがのっていました。 口に含むとあの自転車に乗りながら食べたマルカメムシの味が記憶とともによみがえってきました。

パクチーでした。

私はパクチーが嫌いです。なぜならマルカメムシ味だからです。

虫好き 27歳 男 むしくろとわ